S P E C I A L

川井千秋役:奈緒さん×原案・脚本:野島伸司さん
スペシャルインタビュー(前編)

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奈緒さんと野島伸司さんの出会いは、野島さんが総合監修を務められているアクターズスクール「ポーラスター東京アカデミー」の門を叩いたのがきっかけとのこと。
奈緒さんはアカデミーの掲げる「本物の役者主義」という言葉に感銘を受けられたそうですね?
奈緒
私が「本物の役者主義」という言葉を見つけたのは、野島伸司さんといしだ壱成さんの対談記事でした。私はお二人がご一緒していた時代の役者のスタイルに憧れと敬意があり、そんな方が話されている「 本物の役者 と“”は何だろう?」と、分からないがゆえに惹かれたところがありました。
そこで、「私にはきっとわからないことがたくさんあるんだろうな」、「役者ってどういうことなんだろう?」ということを一から学び育てていただきたいと思い、入所オーディションに応募しました。
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野島さんはオーディションでの奈緒さんの様子を覚えていますか?
野島
やっぱり他の子とは違う雰囲気を纏っていたことを覚えています。
ちょっと独特な感じはありましたね。
これは後に知ったことですが、彼女はその頃すでに福岡でモデルをしていたんです。
だから、お洒落もお化粧もしっかりキメて受けることができたはずなのに、田舎から出てきたばっかりの、おぼこい(あどけない、初々しい)感じの装いでやってきた。
それはたぶん、自分自身の素材を見てもらえるようにという考えからだったのではないかと思っています。
奈緒
オーディションでは、すべてを見透かされるんだろうなと思っていました。
そこで自分の精一杯のお洒落をしていくという選択もあったのですが、そうすると仮面を被るような感じになってしまい、その奥を見られるような気がしたんです。
であれば、何も武装せずに行った方が、自分の可能性も自分で試すことができるんじゃないかと思い、化粧もあまりせず、服装も一つ一つはお気に入りの服ですが組み合わせると野暮ったい感じのもので向かいました。
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「ポーラスター東京アカデミー」で教わったことで特に印象的だったことを
教えて下さい。
奈緒
ポーラスターではアクティングコーチの先生からお芝居の技術的なことを含め、
さまざまなことを教えていただきました。
野島さんから教わったことで、今も自分の中で変わらず大切にしているのは「役に対して自信を持つ」ということです。実はずっと「奈緒には華がない」と言われていたんです(笑)。
その原因は何なんだろうということを長らく一緒に考えてくださっていて、
ようやく見つけたのが、私にとっては「役に対しての自信が"華"になる」ということでした。
それまでは、不安症なこともあって「この役を自分がやっていいんだ」とは思えないまま、オーディションに向かっていたところがあって、自分自身にも負けていたんです。
野島さんに教えていただいたことは、自分としてもとても納得のいくことで、
それを見つけていただいてからは、「自分が自信を持てるようにするにはどうすればいいか」を軸に考えるようになりました。
今も自分と向き合ううえでとても大切にしていることです。
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野島さんがオリジナルアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』の脚本を手がけられることについて、どのような印象を受けましたか?
奈緒
とても楽しみでした。以前からアニメの脚本を書いていらっしゃるというお話は少しうかがっていたので、野島さんのエッセンスがアニメ制作においてどのように加わっていくのか楽しみでした。
最初に見た予告映像の作画が本当に素晴らしくて、普段からアニメを楽しんで観ている者として、このアニメの完成が待ち遠しかったです。
――
そんな『ワンダーエッグ・プライオリティ』に、川井リカの母親・千秋役としての出演が決まった時の率直な思いは?
奈緒
嬉しい気持ちと、しっかりと役を全うしなければ、という緊張を覚えました。
私自身、もともとアニメがとても好きですので、声優さんへのリスペクトもずっと持っていました。そんな中で自分が挑戦させていただくというチャンスを頂けたので、
しっかりと演じようと事前にいただいた出演する第7回の映像を何度も観て練習して臨みました。
――
声優さんへのリスペクトという言葉がありましたが、同じ演じる職業であってもその違いは感じますか?
奈緒
とても感じました。お芝居をするにあたって、声だけで気持ちを表現するというのは、ものすごく難しいことなんです。
実写の場合は声がなくても表情だけでシーンが成り立つといったこともあり得るのですが、声優は演者としては自分の声だけで的確にそのキャラクターが思っていることを伝える必要があります。
わずかなニュアンスの違いで印象が大きく変わりましたし、実際にこんなにも難しいのかということを強く感じた、学びの多いアフレコになりました。
野島
奈緒さんは声やその色合いを自在に操れるタイプなので声優もできるだろうなとは思っていました。今回のお話で会話をするシーンが多い川井リカ役の斉藤朱夏さんは、才能があってお芝居の勘も良いので、奈緒さんにとっても良い刺激になったのかなと思います。
――
奈緒さんは今回演じられる川井千秋をどのようにして組み立てていきましたか?
奈緒
最初は、どちらかというと歳や立場でいえばリカちゃんの方が近いと思ったのですが、台本を読むとキャラクターの年齢にはそこまでとらわれなくてもいいのかなと思いました。
私は現在、母と暮らしているのですが、私が年齢を重ね大人になっていくと、生活の中のちょっとした部分で、母も子どもを前にして弱い部分を見せないようにしてくれていたんだということに気づくようになりました。
千秋も人としてある種、当たり前の弱さを持った人物で、困難から逃げたりズルさがあったり、母であるが故に子を傷つけてしまう部分もあったりします。
ある意味で、大人になりたいけどなりきれてなくて、大人のフリをしているような女性なのかな、と思いながら演じさせていただきました。
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実際のアフレコ現場での様子はいかがでしたか?
奈緒
台本を持ってのアフレコは初めてでしたので、ページのめくり方から教えていただきました。最初は自分が思ってる以上に早口になってしまったり、ちょっと自信がない部分は声に出した時にあらわになってしまうという難しさがありました。
そこを根気よくご指導いただき、一人で演じるシーンを録り終えて、そこから斉藤朱夏さんとの会話のシーンを収録していきました。
一緒にお芝居をする相手の声が聞こえることによって、自分の声色や気持ちも変わるというのは声優でも実写のお芝居でも同じなんだなと思いつつ、朱夏さんにはすごく引っ張っていただけて、なんとか収録を終えることができました。
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これから第7回をご覧になる視聴者の方に注目してほしいポイントを
教えてください。
奈緒
リカちゃんは最初に登場したときからとても明るく、一見すると悩みなどないのではないかというキャラクターでしたが、第7回ではそんなリカちゃんの抱えているものが見えてきます。その背景には親子の関係があり、母親である千秋が持つ、どこか大人になりきれていない弱さがリカに影を落としています。
リカが新たな友達と出会って少しずつ強くなっていく姿を見守って、彼女をぜひとも応援しながらご覧いただきたいです。
もしかしたら皆さんの中にも彼女のような思いを抱えている方がいるかもしれません。そうした方にとって第7回が希望になるようなお話になっていればと思っています。